2019年10月10日

!! 今後の作家活動について大切なお知らせ !!

『今後の作家活動について大切なお知らせ』

いつも妃川螢を応援していただきありがとうございます。
今現在と今後の作家活動について、皆さまにお知らせしたいことがあり、少し長い文章になりますが、お付き合いいただければ幸いです。

もしかすると薄々「どうかしたのか?」と感じ取られていた常連の読者さまもいらしゃるかもしれません。
ここ2年ほど急速に発刊点数が減り、執筆スピードが落ちていることにお気づきの方も多かったのではないでしょうか。

結論から言います。
昨冬に、さる難病に犯されていることが判明しました。
あえて病名は書きませんが、国の指定難病一覧に記されている病気のうちのひとつです。

もうひとつ、ご心配をおかけするといけないので先に書きます。
早急に命に係わる病ではありません。
現状、介護・介助の必要はなく自分のことは自分でできますが、日常生活には少なからず影響がある状態です。

さらにもうひとつ大事なことなので先に書きます。
感染する病気でもありません。

ですが、原因不明ゆえに難病であり治癒方法はありません。
薬による対処療法で症状をやわらげ、進行を遅らせるだけです。

一番の問題は、症状の現れ方として、執筆に非常に影響を及ぼす、という点につきます。
以前のようなスピードと集中力での執筆がかないません。
薬の処方を調整している間(合う薬を探す期間)は仕方ないにしても、合う薬が見つかれば以前どおりに書けるだろうと当初は考えていましたが、そう簡単な話でもないとわかりました。

昨年はほとんど薬の調整で過ぎました。
今年に入って症状の進行とともに、とても執筆に耐えうるものではないと判断をくだしました。

普通の文章はいくらでも書けます。
ただし、創作となると、そう簡単にはいきません。
集中力とともに脳から溢れる言葉・世界観を書き留めていく作業は、私にとってはたとえばビジネスメール等、他の文章を書くのとは、まったく異なる作業なのです。
あれこれ対策を助言してくださった方もいらっしゃいましたが、どれも私のやり方には合わないもので、これまで通り作品を書き上げるために取り入れるのは不可能と判断せざるを得ませんでした。

病名を明らかにしないと症状についても詳しく書けず、何が問題で執筆できなくなっているのか、というあたりが伝わりにくいかと思いますが、そのあたりは当人の苦悩とともに幾らかでも察していただけたらと思います。

ライヴ等、遊びに行くことは可能なのに、執筆はできないの? とは、どうか言わないでください。
時間が捻出できるか否かではなく、もっと根本的な問題なのです。
そして現状、大好きなライヴも(とくにスタンディングの場合)体調的にキツイのが実情です。
だからこそ、ライヴに限らず旅行なども、同行の友人たちに迷惑をかけることなく身体が動くうちに、やりたいことをやり、行きたいところに行っておきたい、という気持ちもあります。

今後も、再発(文庫化や電子書籍化など)のお話はこれまで通りお受けする予定ですし、そのための短い書き下ろしや、各レーベルさんのフェア用等のショートショートのご依頼なども、いただけるのであればお受けする予定でいます。
もちろん新規の描き下ろしや、旧作の続編なども、許される限り生み出したい気持ちは変わりません。

ですのでこれは、断筆宣言ではありません。
けれど、ほぼ断筆に近い状況になるだろうと考えています。楽観はしていません。

今後のお仕事については、病気のことを踏まえた上で、それでもご依頼いただけるのであればお受けします、という対応になります。

・締め切りを設けずお待ちいただける(文庫、新書等書き下ろしのお仕事の場合)
・発刊まで通常の何倍も余裕を持たせた編集スケジュールを組んでいただける

上記のような条件でお仕事をいただけるほど、今現在の出版業界もBL業界も景気は良くないと認識しています。
それでも妃川の書くものが欲しい、出したいと言ってくださるレーベル・編集部があるのなら、誠心誠意がんばらせていただきます。

ひとまず、半分ほど書いて書きかけで止まっている某社さんの原稿が1本と、プロットのOKをもらって手をつけはじめたばかりの作品が1本、手元に残っていますので、その2つのお仕事だけは、最後までやりきりたいと思っています。
また、再発のお話もいただいていますので、告知が上がるのをお待ちください。
それ以降については、上記のとおりです。

今後も、Twitterアカウントは残しますし、ブログの更新もしようと思います。
が、闘病記にはしたくありません。
でもたまに「つらい」と愚痴ることがあるかもしれません。そのときはどうか見逃してください。

とはいえ、お仕事のお知らせは、今でさえ少ないのにさらに減ることでしょう。
ですので、日常のことや趣味の音楽の話題などが、これまで以上に増えるかと思います。
それでもよければ、これまでどおりお付き合いください。
書かない妃川に興味はないと言われる方がいらしても、それは当然だと思います。どうかフォローを外してください。今まで応援ありがとうございました。

正直、デビュー当時は、ここまで続けられると思っていませんでした。
いまさらなのでぶっちゃけますが、私は子どものころから一度として作家になりたいと思ったことのない人間で、文章も作話も独学で、そういった講座はもちろん、新人登竜門の新人賞にすら応募した経験がありません。
当時、ネットスカウトという、ネット上で活動しているアマチュア作家にたてつづけにデビューの声がかかったことがあり、私もそのなかのひとりでした。
なぜネットでオリジナルBLを書いていたのか、という話は、説明が長くなるので端折りますが、ネットだから素人がへたくそな文章晒してても許される、という緩い認識のもと、書き散らしていたにすぎませんでした。
いわゆる同人誌活動は経験がなく、イベントに出たこともありません。自分の文章に対して対価をいただいたのはデビュー作がはじめてです。
編集部にしてみれば、”数うちゃ当たる”の戦法で、何人かめぼしそうな新人作家をデビューさせれば、一作くらいは当たるだろう、という程度の気持ちでお声がかかった、その他大勢の中のひとりに過ぎなかったと理解しています。
決して浮足立たなかったのは、当時自分自身が別ジャンルですが出版業界にいたためです。いかに厳しいかはわかっていました。
ですが、それが結果的によかったのか、内情を知るがゆえに単に使いやすかったのか、当初試しに1冊のお話が、二カ月連続発刊で2冊に増え、翌年には年間5冊以上の作品を書かせていただけるようになり、一番多い年ではたぶん、一年間で十数冊が発刊された年もあったように記憶しています。
新人賞の狭き門を潜り抜けてデビューされた作家さんに対するコンプレックスもあり、作品には常に拘りを持ってきました。
(当時、ネットスカウトのくせに、的な空気があったのは事実で、それに幾らか萎縮していたのかもしれません。それもあって結局今日まで同業のお友だちを持つことができませんでした。今となってはそれが心残りです。)
たかがBL、されどBL。
そんな思いで、今日まで書いてきました。
いまだに続編を望むお声をいただけるようなシリーズ作品を書くこともできました。
もういい歳だしいいかげん作家として忘れ去られてもしかたないかな、とも考えていた近年になって、新規の読者さまに認知していただけるような作品を生み出すこともできました。
すべて、読者の皆さまあってのことです。そして何より各社担当様との絆ゆえです。
作品は、ひとりで生み出すものではありません。担当様とイラストレーターの先生との共同作業の結果、生まれるものです。
最終的に、そういう信頼関係を結べた編集部とのみお仕事をさせていただき、執筆環境は恵まれていたと思っています。本当にありがとうございました。そして、可能であれば、これからもよろしくお願いいたします。

この文章を出すタイミングにも迷いました。
当初はもっと早いタイミングで出すつもりでいたのですが、やはり心のどこかで現状維持を望む気持ちが拭えないのか、悩んでは見送る日々でした。
今現在、結果待ち中の検査があり、それが出てからにしようと考えたのもあります。
ですが、まだ時間がかかるようなので、ひとまずそれは置いておくことにしました。

もし、幾らでも待つよ、と言っていただけるのであれば、これまでとかわらずご感想など、お聞かせいただけたらと思います。
これまで以上のお声を編集部にお届けいただければ、この先も執筆活動をつづけられる可能性が高まるかもしれません。
日常のことや愛する音楽のことについても、気軽にコメント等いただけたら嬉しいです。

長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。


妃川 螢


サイトからのメール送信方法
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2)http://himekawa.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html
posted by 妃川 螢 at 11:25| お仕事情報

2019年02月21日

劇場版シティーハンターに100点満点つけられない口惜しさ

※ネタバレ配慮してません。これからご覧になられる方はご注意ください。















もうね、OPしょっぱなからガッツリ持ってかれました。
あのスピード感あふれるアクションシーンに、「Angel Night」ははまりすぎです♪

すごい、いい意味で初心者にやさしくない構成で(笑)そこがよかった。
だって、リョウと香の関係はもちろん、海坊主とミキちゃんの関係も、冴子さんの肩書きも、一切説明なし、という不親切さ(笑)つてこられる人だけついてこい的な展開が小気味いい。

申し訳ないけれど、新宿駅に伝言板があったあの当時を知ってる世代が観るのと、知らない世代が観るのとでは、感動が雲泥の差ではないかと思います。
最近よく言われる新規をディスる、ってやつではなくて、これはもうね、しょうがないですよ。だって、80年代のあの空気感を失うことなく、うまーく今が取り入れられていて、よく脚本にOK出たな?ってこっちが心配になるくらい例のギャグも満載で(笑)
(個人的な好みを言えばは、連載当時から、あまりにもあの手のギャグばかりだと若干ウンザリしていたクチなので、ちょっと多いな、という印象ではありましたが……。)
だからこそ、80年代の漫画連載当時、アニメ放映当時にオンタイムで見ていた世代に訴えかけるものが強い。
当時まだ田舎に住む子どもだった私などは、新宿駅に行ったら本当にあの伝言板があるのかな? 本当にXYZって書かれてたりするのかな?(もちろん悪戯だとわかってるけど)って、漫画やアニメを見ながら想像していたわけです。そりゃあ、感動ひとしおで当然でしょう?

展開的にも、最初の時点でほぼラストが読めるわかりやすさ。でも、2時間サスペンスドラマに固定ファンがついているのと同じように、お決まりだからこその楽しさと満足感(⋈◍>◡<◍)。✧♡
そうそう! そーこなくっちゃね! って感じ。

当時はエピックソニー全盛期で、バンドブームで、夜中に放送される『eZ』をこっそり見てたり、そこには当然TMが出てたし、シティーハンターの音楽を手掛けた名だたるミュージシャンも毎回のように出てたし、私の音楽歴の根底にあるものと、シティーハンターという作品は密接に関係しているから、なおさら思い入れも強くなります。
正直、漫画、アニメ単体なら、私は北条作品では『キャッツ♡アイ』派なのです。でもそこに音楽が加わるから、シティーハンターに対して別の意味での思い入れが生まれてしまうのです。
(戸田恵子さん、もうアンパンマンの声以外、声優はやらないと言われてると聞いたことがあるのですが、瞳やってくれて、そのうえ……。愛ちゃんの声も本当に変わってなくてすごかったなぁ)




エンディングの「GET WILD」以外にも何曲かは流れるだろうな……と思ってはいたものの、こんなまるでMVがごとく、オリジナルアナレンジのままあれもこれも流してくれるとは……!
しかもそれが嫌味な感じではなくて、オンタイムで聴いていた世代が、おお……! と胸躍る魅せ方がされていて、本当に感服。
とくに、ヒロインの子のモデルの撮影スタジオ内で流されている、という設定で流れるランホラこと「Running To Horizon」と一番の見せ場のアクションシーンで流れた「SARA」にはビックリ&感動。

だからこそ、エンドロール! 口惜しすぎます!(´;ω;`)ウゥゥ
Twitterにチラリと書いて消した件、気づかれた往年のFREAKSもいらっしゃるかと思いますが……。

× FENCE OF DEFENCE
〇 FENCE OF DEFENSE

映画のエンドロールでアーティスト名表記を間違えるなんて、ありえないことですよ! 公式さん!
今からでもエンドロール修正できないのでしょうか? できないのであれば公に謝罪すべきでは?
本編が本当によかっただけに、最後の最後に、もうガックリきてしまって……( ノД`)シクシク…

エンディングで「GET WILD」につづいて「STILL LOVE HER」まで流してくれて、号泣しそうでした。
しかも流れる映像が……「槇村〜〜〜!」と心の中で叫んだし、シティーハンター2の50話なんて神回以外のなにものでもない映像をバックに聞けるなんて……。

だからこそ!
どーして!・゚・(ノД`;)・゚・って気持ちがより強く……円盤化されるときには直ってるでしょうが、劇場で間違ったまま流れ続けるなんて、フェンスのライヴにも行きまくってた身としてひじょうに哀しい……(ノд-。)クスン

今日みてきたら直ってたよー!ってことありませんか?(報告求む)

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posted by 妃川 螢 at 01:42| 日記

2018年12月23日

クリスマスSS『クリスマス・イヴイヴ〜束縛激しい情人を持った大学生3人の一幕〜』

移動になられた前担当様からいただいたプレゼントのパッケージ↓
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これが、担当様曰く「史世のイメージ」とのことだったので、長くお世話になったお礼もかねて、懐かしい面々にご登場いただきました。
結局、新作出せないままになってしまいましたが、気にかけてくださってたのかな……。本当にありがたいことです。


↓(以下、エロはありませんが、説明なしにお話がはじまって終わります。ご注意ください)



クリスマスSS 『クリスマス・イヴイヴ』


 大きなトートバッグを肩にバタバタと玄関を出ようとする年若い情人を引きとめ「車を出そう」と提案する。
「え? いいの?」
 今日はこのあと会合では? と首をかしげる青年の小脇で、眠そうに目を細める巨大なトラ猫も同じ仕種で首をかしげた。
 どちらも愛らしい。
 彼が抱える大きなトートバッグのなかみは愛猫だ。
 底には肥満対策の猫缶なども収められているのだろうが、保護したときに青年の掌におさまるサイズだったトラ猫は、見る間に巨大化して、以来デブ猫路線まっしぐら。愛らしいのはいいが、いささか健康面が心配ではある。
「おまえがこの時間から出かけるということは、あちらも同じ、ということだ」
「あ、そっか」
 表向き警備会社の社長職にある高野(たかの)のもとに身を寄せる青年の交友関係が決して広いといえないのは、自分の裏の顔のせいばかりではない。
「史世(あやせ)の機嫌が悪くてさー、曄(あきら)もお手上げみたいで、もう頼れるのはこいつだけ」
 そう言って、晁陽(あさひ)はおとなしくトートバッグにおさまる愛猫を見やる。
「SNSに盗撮写真のせられてから、前にもまして口うるさいって……、あ……」
「きかなかったことにしておこう」
 自分の裏の顔の上司である男の束縛激しい一面に言及されて、内心苦笑ぎみに釘をさす。どちらの言い分もわかるからだ。
「しかたあるまい。どれほど腕っぷしがたっても、ああいう事態は避けようがないからな」
 拳で解決できる問題でもない。
「まぁ、撮りたくなる気持ちもわかるけどさ。史(あや)と曄が並んでたら、世界違うし。あのときも、すぐに気づいて消させたのにさー、非常識なやつ多すぎ」
 少し前のことだ。
 あまり大きな声では言えない縁で繋がった大学生3人組が、カフェのテラス席でお茶をしていたところ、たまたま居合わせたらしい赤の他人(女子高生だと報告をうけている)に隠し撮りをされたのだ。
 今や日本の裏社会を牛耳ると言っては言葉が悪いが、一大組織を率いる若き任侠人の情人が日本屈指の最高学府に通う学生であり、たぐいまれな頭脳と身体能力を持つ、陰で妖怪だの化け猫だのと称される傑物であることは、もはやその世界では知られていて、手を出そうなどと考えるのは、内情をしらないチンピラくらいのものだ。
 本人の腕っぷしが玄人にも引けを取らないとなれば、暴力でどうこうできるわけもなく、そういった心配が減ってきていた昨今、よもや一般人の非常識な行動によって安全を侵害される日がこようとは……。
 ツルの一声で警護体制は強化されているが、それすらも聡明な青年には気にくわないのだろう。件のデータもありとあらゆる手段を使ってセットワーク上からすでに削除されているが、閲覧者のなかにデータを保存したものがいれば、そこまではどうしようもない。
 ゆえに、恋人兼保護者の心配も過剰になる。
 だが男の耳には、青年が口にした、もっと別の件が気にかかった。
「おまえもいい男だ」
「……!」
 闇の世界とは無縁そうな、その名のとおり太陽の明るさをまとった青年は、しかし一緒の時間を過ごすことの多い友人の非凡さに舌をまきつつ、自分の平凡さと比べる発言をしがちだ。だが、そのあたりまえの明るさこそが、闇社会に生きる男にとって、癒しであり、守るべき平和と日常の象徴でもある。
「茶々丸もそう思うだろう?」
「うなぁ」
 トートバッグにおさまった恰好で、呑気な応え。
「都合のいい時だけ返事するなよ、もうっ」
 青年が丸い頭を撫でると、愛猫は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
「史がいると史の言うことしかきかなくなるくせに」
「なぁう」
 それは動物的本能で従うべき人間を見極めているのだろうと思うが、あえて口にはしない。
「クリスマスはそれぞれ予定があるから、その前に集まろうって話になって。外はお許しが出なかったらしくて……」
 そう言って晁陽が口にしたのは、以前組織に籍を置いていた元幹部が、足を洗ったあとに開いているコーヒー専門店の名前だった。あそこなら貸し切りにしてくれるだろうし、万が一にも危険はない。猫連れも平気というわけだ。
「クリスマスケーキはチョコがいいかな、定番のいちごのがいいかな」
 クリスマスは一緒に過ごせると伝えてある。
 どちらでもおまえの好きにすればいいと返すかわりに、男は「24日の午後から25日丸々いっぱい、開けておけ」と返した。
「ディナーの予約を入れてある」とつづけると、青年の頬がカッと色づいた。
「どんな想像をしているのかは知らないが、社会勉強の一環だ」
 オーダーに出してあるスーツをうけとって自分なりにコーディネイトしてくるようにと指定する。ネクタイのノットの太さまで気にするのが、大人の着こなしというものだ。
「レストランは?」
「マナーとワインの講習だ」
 社会に出るまでに、自分が大人として教えられることはすべて教えてやりたい。そのためになら愛しい情人相手でも妥協はしない。
 晁陽がむくれたように膨らんだ頬を愛猫の頭に埋める。
 その癖毛を大きな手でくしゃっと撫でて、「部屋もとってある」と耳元に囁いた。なんのために翌日も丸1日あけるように指示していると思っているのか。
 まろい頬が、さらに熱を上げる。いつまでも初心さを失わない純真さに内心感嘆しつつ、かすめ取るようにその唇に口づけた。
 外から、「車の用意ができました」と部下の声がかかる。
 大組織に仕える身でありながら、自身も傘下組織の長でもある。上司の心配は、そのまま自分にも置き換えられるもので、自分は平凡だと信じて疑わない青年ゆえに、心労もひとしおだ。
 彼が知る必要はない。
 青年がどれほど魅力的な人間かなど、自分ひとりが理解していればいいことだ。


 この寒い時期に、氷たっぷりのアイスコーヒーを啜る横顔が美しすぎるがゆえに怖すぎて、晁陽は茶々丸の収まるトートバッグをぎゅっと抱きしめた。
 寒くないのだろうか。代謝がいいにもほどがある。
 ひとの3倍は食べるのに、すべてエネルギー変換してしまうのだから恐ろしい。
「史〜。もういいかげん機嫌なおせって〜」
 誰もが情報発信者になれる昨今、気にしていたらきりがない。
 自分たちの場合は環境が環境だから、できれば目立ちたくはないが、その顔に生まれた自分を呪ってくれとしか、晁陽には返しようがない。
 もちろん友人の怒りの要因が、盗撮されたことそのものではなく、それを許してしまった自身の甘さと、その後の恋人の対応にあることは晁陽もわかっている。わかっているからこそ、しょうがないではないかと宥める以外にない。
 飼い主の苦境を察した茶々丸が、トートバッグを抜け出して、史世の膝へ。巨体をものともせず軽やかに跳び乗って、白い頬をひとなめ。
 猫又の親分のような彼にそんなことができるのはおまえだけだ、と胸中で謎のエールを送りつつ、晁陽は史世を挟んで反対側に座る曄に目配せして、自分もカウンター席に腰を下ろした。
 昔は大組織の幹部だったとは思えない穏やかな笑みを見せるマスターにホットココアをオーダーし、この世のものとは思えない美しい友人を見やる。
 その整った横顔が、ふいにこちらを向いて、晁陽の心臓が跳ねた。
 その気はなくても魅入られそうになる、美しすぎる容貌の中心、零れ落ちそうに大きな瞳が晁陽を映した。
「晁陽」
「へ? え? なに?」
 俺なんか、怒られるようなことした?
 史世の頭越しに曄にチラリと視線をやると、「ごめん」と口の形だけで詫び、両手を顔の前で合わせている。
「なぜおまえがこれを持っている?」
「え? あ!」
 ポケットに納めていたはずの自分のスマホが、史世の手の中にあった。しかもロックをはずされている。教えたことなどないのに!
「どうして!?」
「ききたいのはこっちだ」
 眼前に迫る美しい顔と、ディスプレイに表示されたものを交互に見やって、「あ」と声を零してしまった時点で罪を認めたようなものだった。
 史世が手にした晁陽のスマホには、件の隠し撮りされた画像が表示されている。
 ようは晁陽も、ネットに流れてきた画像を保存したひとりだったのだ。その話を、曄にはした記憶がある。
「え? だって、すごいいい写真だったから」
 隠し撮りはいただけないが、犯人の女子高生が投稿時に「すごい美人発見!」とコメントを添えたのもわかる、写真はとてもよく撮れている。
 会うたびに3人で撮影しているし、どうして赤の他人の撮った、失礼極まりない行為の証拠である画像を友人であるおまえが保存しているのか、と史世は言いたいのだろう。それはわかるが、でも、それにしても削除するには惜しい、と晁陽も思わせるいい写真だったのだ。
「え? ダメ?」
「ダメだ」
「なんでー?」
 ネットに流すわけでも、誰かにみせるわけでもない。自分で楽しむだけなのに。
 史世の細い腕が晁陽の首に絡む。この細腕で、どうしてあんな戦闘力が生まれるのか不思議でならないが、今問題なのはそこではない。
「史、近すぎて怖い」
 鼻先が触れる距離に、整いすぎた顔が迫っている。
「曄、撮れ」
「はーい」
 史世の手から、曄がスマホを受け取る。
「高野(たかの)に送ってやろう。クリスマスプレゼントだ」
 全身の血がサーッと下がるのがわかった。
「消す! 消すから!」
 だからそれだけは勘弁! せっかくのクリスマスディナーとホテルにお泊りなのに、どんなお仕置きをされるかしれたものではなくなる。
 恋人の束縛の激しさにウンザリしているのは、何も史世だけではないのだ。
 晁陽も、そして曄も、その点においては同士のはずなのに!
「晁陽さんをいじめてるときが一番楽しそう」
 曄がスマホをいじりながら、史世の様子を呑気にレポートしてくれる。
「止めろよ!」
 咄嗟に晁陽は、史世の膝にいた茶々丸を抱き上げる。
 見事、撮影された写真には、茶々丸のタプタプの腹が大写しになった。


 じゃれる3人を、コーヒーカップを拭きながら、マスターがニコニコと眺めている。こっそり撮影した写真を、3人それぞれの保護者に送信していることは、ひとまず内緒だ。


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登場人物は、主に↑のシリーズに登場している受け子ちゃんたちです。
もはや何年も新作かけてませんが、いまだに時折お声をいただくので、ありがたいことだと思っています。
紙はどうかわかりませんが、電子書籍になっているはずですので、気になった方は探してみてください。
わかる方だけ楽しんでいただければと思います。
もう古い作品なので、ご存じない方も多いと思いますし……(^▽^;)

キャラ的に、史世は一瞥で一般人のカメラを下げさせる目力があるとは思うのですが、まあ本編に無関係のSSなのでいいかな……と(^-^;
posted by 妃川 螢 at 00:36| お仕事情報

2018年08月05日

オデッセイに触発されて80's〜90's MV

金曜ロードショーでやってた映画『オデッセイ』劇中で流れたディスコミュージックの件。
Twitterで触れたら、止まらなくなって、あのあと動画検索しまくってしまいました。

というのも、その昔にCD買った記憶があるし、当然スマホに入ってると思ったらは入ってなくて、CD探そうにもどこにしまったかもわからず……。
ひとまず自分用の覚えで、以下動画の羅列ですが、お勧めなのでぜひ聞いてみてください。


↑オデッセイで流れて、マット・デイモンに最悪の烙印押されてた(笑)90's、Twitterで80'sって書いてたけど、主題歌に使われてた映画『スペシャリスト』の公開が90年代でした。


↑これぞまさしく80's(笑)
カセットテープかビデオテープのCMソングで、すっごく記憶に残ってるんですよねぇ。


↑公式MVなのに、R15指定なのか不明ですが、注意アナウンスが表示されて笑ってしまう。
これは麻倉未稀のカバーヴァージョンのほうが実は記憶に鮮明。たしかドラマの主題歌だったかな?


↑これも麻倉未稀。大ヒットドラマ「スクールウォーズ」の主題歌。


↑映画『フットルース』のサントラの一曲。主題歌『フットルース』のほうが有名かもだけど、私はこれが一番好き。サントラアルバムは全部名曲。めっちゃお勧め。


↑映画『TOP GUN』のサントラの一曲。サントラアルバム全曲が名曲で、大ヒット曲のオンパレード。
一番知られてるのは主題歌の「DANGER ZONE」だと思うけど、私は「Mighty Wings」かこれのほうが、もっと好き。


↑たしか何かのCMソングとして流れていたような……。


↑言わずと知れた大ヒット曲。このあたりの時代のこのあたりのサウンドが一番好きかも。


↑BON JOVIは好きな曲いっぱいだけど、この曲は入り方が大好きすぎて、実はその昔、某作品で主人公が高校時代学祭のゲリラライヴで歌った曲という設定に使ってしまったという。(もちろん作中に明記はしてませんが)

これは余談ですが、上記の動画を漁っていたら、80年代〜90年代前半のB'zの動画が出てきて、やっぱこのころのB'zが一番好きだなぁ……と改めて思ったのでした。
肩パット入りのスーツにヒールでライヴ参戦があたりまえだったあのころ(笑)
Tシャツ+スニーカーでライヴ参戦なんてありえない、ステージ上のアーティストに失礼、ってのが暗黙の了解だったあのころ(笑)
かたくなにDVD化されないビデオでしか世に出てないころの映像、いいかげん諦めてDVDにしてもらえませんか?(→公式さーん!)


※一応動画は全部公式のものか権利表示のあるものを選んでますが、問題があるようでしたらご指摘ください。
posted by 妃川 螢 at 00:54| 日記

2018年05月03日

Your story with−前進篇

ずっと気になっているCMがあって、ドラマ仕立ての車のCMなんですが。
シリーズで続いているなかで、私がとくに気になっているのはコレ↓



短いCM内では語られない脚本上の設定の部分がすごく気になって、ついつい深読みしてしまいます。

主人公の男の子:おばあちゃんちに来てて退屈を持て余しているように見える。
母親:息子に「もうすぐオジサンがくるよ」と伝える
男の子:よろこぶ。
オジサンと過ごす時間をとても楽しむ主人公の男の子は、オジサンが急な仕事で帰らなくてはならなくなってむくれる。

という大まかな流れ。
母親がおばあちゃんちと言っているところを見るに、舞台は夫の実家かあるいは自分の実家か。
オジサンは、父方の叔父(実父の弟、舞台が夫の実家の場合)か母方の叔父(母の弟、舞台が自分の実家の場合)か不明。
男の子の実父の存在については語られていない。
ここで気になるのは、男の子が「オジサンくるよ」ときいて、奇妙なほどに喜んでいること。
同時に、一切語られない父親の存在が気になってくる。
もしかして、お父さん不在かな?(亡くなっているか離婚したか、あるいは単身赴任などで長期留守にしているか)
とにかく男の子は父親不在を寂しく感じていて、一番身近な大人の男性だろうオジサンにとても懐いている。(たぶん父親像を投影している)
男の子の家庭事情が、とっても、とーっても気になる。

たかが30秒ほどのCMで、これほどまでに想像(妄想?)をかきたてられるとは……(笑)
同シリーズのほかのヴァージョンのCMには、これほど興味をひかれないんですよね。大方想像がつく設定になっているから。
でもこの1本だけは、謎が多すぎる(笑)

どこかに詳しい設定とかうらばなしとか載ってないのかな、と思ったのですが、ひとまず見つけられず……。
探せばあるのかも……ですが、まぁ、こうして想像しているのが楽しいのかな(^-^;

SUBARUのサイト → https://www.subaru.jp/yourstorywith/

話は変わって。
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posted by 妃川 螢 at 13:45| 日記